駅で待ち合わせ 2018 9 16
書名 電気の基本がよくわかる本
著者 有馬 良知 秀和システム
「電子は、ゆっくりと動く」
多くの人は、電子というものは、
非常に高速で動くものと思っているでしょうが、
実は、人間よりも遅く、亀よりも遅いかもしれません。
この本によれば、電子は、
銅線ケーブルの中を「0.1mm/秒」の速度で動くそうです。
(電流1A、断面積1mm2という条件下になります)
駅で待ち合わせで遅刻しそうになった。
急ぎたい。
でも、駅は混雑していて、なかなか前に進めない。
一直線に進めれば間に合うかもしれないが、
みんな不規則に動いていて一直線に進めない。
だから遅刻する。
電子も似たような状況と言えるでしょう。
銅線ケーブルの中では、銅原子が、
比較的規則正しく並んでいるかもしれませんが、
常温では、銅原子は振動しているでしょう。
そうなると、電子が、
「銅原子ジャングル」の中を進むのは、
非常に大変なことだと思います。
そういうわけで、電子は、亀よりも遅く進みます。
問題は、振動している銅原子が邪魔なので、
冷やしていけば、銅原子は振動しなくなるのではないか。
その通り。
マイナス100度、マイナス200度、マイナス273度。
ここまで冷やせば、銅原子の振動は、
限りなくゼロに近くなり、
電子が進む「道」は整備され、高速で動けるでしょう。
これで「超電導」は達成され、
つまり、電気抵抗はゼロになり、
電気は永久に流れ続けるでしょう。
電気抵抗があるからこそ、電気は失われるのです。
「電気は、ところてん方式で伝わる」
多くの人は、こう思ったかもしれません。
「電子は、亀の動きより遅いと言うけれど、
スイッチを入れると、すぐ電気はつくはずである」
確かに、電子の動きは遅いのですが、
電気が早く伝わる仕組みがあるのです。
それが「ところてん」です。
夏になると、和食で定食を頼むと、
「ところてん」がついている場合があります。
「ところてん」は、半透明の寒天状のものですが、
それを「天突き」という専用の調理器具に入れて、
「ところてん」を押し出すと、「天突き」の先から、
瞬間的に麺のようになった「ところてん」が出てきます。
これは、「天突き」の入り口の「動き(力)」が、
「天突き」の出口まで瞬間的に伝わります。
これが、電気が伝わる仕組みです。
たとえ話をすれば、銅線ケーブルの入り口から、
電子が1個入ったら、出口から電子が1個出るという仕組みです。
正確に言えば、電子が動く速度は遅いが、
「電界」という「力」は、光の速度に近い速度で伝わるということです。
(参考)
そういえば、物質を絶対零度まで冷やしても、
原子の振動はゼロにはならないということを読んだことがあります。
これは、量子力学で説明されるというか、
量子力学で要請される法則です。
このような量子力学は、
電子や陽子などの仕組みを説明する学問なのに、
低温の世界にも量子力学が登場するのは、
不思議な感じがしますが、便利な学問でもあります。